高周波三角波発振回路の作成#2
今回は回路を組んで実際に動作させるところまで行きます.
今日紹介するのは,RIMAC Concept Two です.Concept Two は,バッテリーとモーターで走行するピュアEVです.また,車体にはカメラ8台,レーダー6台,超音波センサー12台,光学式測距センサー2台,そして,高精度GPSと自動運転用IMU(慣性計測装置)を搭載しています.当然 ADAS (先進運転支援システム)にも対応していて,自動ブレーキや回避制御、死角監視、車線維持、交通パイロット機能を含む完全適応型クルーズコントロールなどの機能も有します.まぁ僕の中では,機能よりもデザインの魅力のほうが強いですね.
それでは実際にどんな回路を組むのかを説明していきます.今回は,基本に忠実に,オペアンプ2つで作成できる三角波発振回路にしました.カウンタと D-Aコンバータで作成できる三角波発振回路もありますが,回路規模が大きくなるのとR-2Rラダーが全くと言っていいほど売られていないので,没にしました.
コンパレータと積分回路を用いた比較的簡単な三角波発振回路です.動作原理については,ググればすぐに出てくるので詳しくは説明しませんが,コンパレータの出力を積分,ある一定の電圧になったらコンパレータの出力を反転,また積分...の繰り返しで発振します.そのため,コンパレータ回路の出力から矩形波を取り出すことも可能です.
この回路は単電源動作させるために,コンパレータの反転出力とオペアンプの非反転出力に電源の1/2の2.5[V]を入力しています.このため,コンパレータ回路の出力が5[v]と0[V]の時で,R7に流れる電流は大きさは変わらずに向きだけが変化するようになります.
それでは定数を求めていきます.まずはオペアンプですが,今回の回路は高周波なので高スルーレートが要求されます.今回の発振回路は,振幅が5[V]で発振周波数が500[kHz]より,
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なので,5[V/μs]以上のスルーレートのオペアンプを選択していきます.今回は,単電源動作でスルーレート40[V/μs]のNJM2716を使用します.
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続いてコンパレータですが,実はここもNJM2716を使用する予定でした.しかし,ここは出力が500[kHz]の矩形波なのでスルーレート40[V/μs]では到底追い付かず,三角波出力がほぼ矩形波になってしまったので,高速コンパレータのNJM2403を選択しました.秋月にはスルーレート4100[V/μ]というオペアンプがありますが,手元になかったのでコンパレータを使用しました.コンパレータはオペアンプでも代用できますが,コンパレータには位相保障用のコンデンサが入っていないため,増幅ができない代わりにオペアンプよりも高速に動作することができます.
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シャントレギュレータですが,ここは電源の1/2を出力することが出ればいいので,抵抗分圧でも問題ないです.
残りは定数を求めていきます.NJM2716は最大出力が4.5[V]なので,振幅を2.5±2[V]とします.ここにはそんなに電流は必要ないのと,積分回路に流れる電流に影響してほしくないので,R2を比較的大きな150[kΩ]とすると,
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振幅がわかったので,R7を求めます.コンデンサは,漏れ電流が少なく周波数特性が優れ,容量誤差の小さいポリエステルフィルムコンデンサを使用します.容量は,(売ってた中で最小の)100[pF]とします.積分回路の動作はコンデンサの基本公式より,
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市販のE24系列には存在しない値ですが,可変抵抗器などで調整すればいいので,3[kΩ]+5[kΩ]とします.
コンパレータのプルアップ抵抗ですが,この抵抗はR2+R1やR7に対してかなり小さくしなければいけないので,50[%]ディレーティングし,
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なので,150[Ω]とします.
そしてこれをブレッドボードに組みました.ところどころ定数が違いますが,大きな変更はありません.電源は+5[V]です.
そして,実際に発振させたときの波形がこちらです.
どうして...(続)
※2019/05/30 - スルーレートの算出式が間違っていたので訂正しました.